DIALOGUE

Vol.1 JELADO meets Daiju Yanauchi

“The Rules of Outsider”、第1回目となる今回のゲストは漫画家柳内大樹氏。「ギャングキング」で累計1000万部をたたき出し現在「セブン☆スター」を『週刊ヤングマガジン」にて連載中の氏と共に「アウトサイダー」の「アウトサイダー」たる所以をJELADO代表後藤洋平と共に対談形式でお送りする。




「第一印象は生意気そうなヤツだなと(笑)」—柳内大樹

後藤 初めて会ったのは確か2006年の4月ぐらいだったかなと。柳内さんが恵比寿のうちのショップに来てくれたんですよね?

柳内 そうそう、たまたま飛行機の中で雑誌「Lightning」を読んでいたらJELADOの紹介ページがあって、ヴィンテージのノースビーチをバックに後藤さんの写真が載ってたんです。それで、もともとヴィンテージウエアが好きだったのでとりあえず行ってみようと。

後藤 最初柳内さんがいらっしゃった時はまさか漫画家の柳内大樹さんとはわからずに、ただただヴィンテージにやたら食いつくあやしい人が来たなと(笑) その後何回かお店に来てくださいましたが、ある日コンビニに行ったら漫画コーナーに「柳内大樹」って名前があって「アレ⁉ 漫画家だったの?」ってびっくりしたことを今でも覚えてます(笑)

柳内 後藤さんの第一印象は生意気そうなヤツだなと(笑) でも、そのあと何度か食事したりするうちに生き方や仕事の姿勢なんかに共感を持って気が合うなと。そこからなんだかんだ12年ほど、意外と長い付き合いになってしまいました(笑)




「そもそも漫画家になったきっかけって?」—後藤洋平

柳内 漫画家になることは小学校2年の時に決めたのですが、きっかけはなんなんだろう(笑) 当時、ただただ漫画を描くことが楽しかったんですよね。今でも10時間ぐらいぶっ続けで描き続けていてもやっぱり楽しくて。漫画家になった理由がどうとかじゃなくて、あの頃から自分が楽しいと思えることを追い続けた結果、こんなオトナになりました(笑)

後藤 その気持ちをいまにいたるまでずっと持ち続けているというところがスゴいですね。

柳内 でも、後藤さんもそうでしょ?

後藤 そうですね。自分がアパレルの世界で生きていくことを決めたのは高校生の時でしたが、お互いにバカみたいにひとつのことを夢中で追い続けている姿勢が、いまこうやってここで話していることに繋がっているのかもしれないですね。




モノづくりに対して想うこと。

後藤 僕が見てきたヤンキー漫画って強いヤツがいて、とにかく爽快感が楽しいものが多かったのですが、柳内さんの作品に出てくる主人公ってとにかく悩みますよね。ヤンキー漫画なのにファーストガンダムみたいな匂いが漂うというか(笑)

柳内 僕が描く作品は主人公が弱いことが多いんです。でも、強いヤツが活躍するんじゃなくて、弱いヤツがどうやって高い壁を突破していくのか、その過程にこそ共感があると思うんです。誰しもが臆病な側面ってあると思いますし、自分自身がそうやって困難を乗り切っていきたいな、って願望もこもっているとは思いますが(笑)

後藤 ストーリーの中に出てくるセリフが、すべて柳内さんが実際に言っていた、もしくは言っていそうなことであるのは、そういった背景もあるんですね。

柳内 とにかく自分がその時思っている感情をしっかりと作品に落とし込みたいというか。嘘をつきたくないんです。強がって生きている時期も若いときはありましたが、今は自分が臆病であることに誇りを持っているし、だからこそ見える風景が心地よいし自分らしいなと。

後藤 そこは共感できるところですね。JELADOが大事にしていることって、着てもらうことのリアリティというか。誰しもが自信に満ちたヒトばかりではない、という事実があったとして、そこに対してJELADOは洋服のスペックを押し付けるのではなく、あくまでも着ることで本人が自信を持てる「ファッション」であることの本質をついていたいんですよね。




「売れるコト」に対して想うこと

柳内 とはいえ、結構攻めてる洋服を頻発している節もあると思うけど(笑) 「売れる」みたいな方向性はどう考えてるの?

後藤 そうそう(笑) もちろん、売れることってすごく大事なことだし、意識していないことはないですが、大前提「僕」がやっている意義を大事にしていたいんですよ。僕自身も、業界に対して自分が素直に良いと思うことを提案し続けていたいし、ウチの洋服を着てくれるヒトたちに冒険し続けてほしいという希望もあるんです。

柳内 美学だね。肩書きはさておき、自分がどうありたいのかっていう姿勢は本当に大事だと思う。

後藤 柳内さんこそ「ギャングキング」ってかなり売れたと思うんですけど、そのあたりはどう捉えているんですか?

柳内 売れる売れないって、作品ではなく本人の壁だと思ってるんですよね。何が売れるのかではなく、どうしたら楽しく生きられるのか、どうしたら仕事を楽しめるのか、それを貫き通した延長線上に、磨きこまれた「良さ」みたいなものが生まれて、結果として評価につながるというか。だからこそ、今でも本気で人生を楽しむ努力をしてます。頑張っていることだけで安心しているヒトも多い世の中だけど、そういうことじゃない。

後藤 あくまでも「自分」で勝負して「自分」として勝つことにこそ本質的な魅力があるとってことですよね? もちろん、世の中のウケを追及することに正義を求めるのも、それはそれで正解だとは思いますが。数ではなく、質で勝負する・したい。それが僕たちなのかもしれませんね。




「アウトサイダー」であることに関して

後藤 今回、この企画にお招きした本題でもあるのですが、僕からみて柳内さんって「アウトサイダー」だと思うんです。たとえば作品「ギャングキング」って人気絶頂期に休載して、しばらく経ってから違う出版社からリリースしてますよね? 漫画業界でそういった事例ってなかなかないと思うんですが、そのあたりってどう捉えているんですか?

柳内 あれね(笑) ひとつだけ言えるのは、昔からいまに至るまでずっと自分なりの美学・正義を大事にしていたいってところがあって、その結果がアレかなと(笑) だから、そのこと自体がどうって話じゃなくて、先ほどの話と重複しますが、深い意味で必死に楽しむ努力をしたならば結果がなんであれ全部正解っていうことかと。最初の版元の担当さんとは今でもよく飲みにいくんですけど、ヒトともそういう本気のつきあいをしていきたいですよね。

後藤 柳内さんらしいですね。自分は柳内さんとの距離が近いからだと思うんですが、作品を見れば柳内さんが今何を考えているかがわかるというか、それぐらい本人の想いがダイレクトに伝わるのが柳内さんの作品の魅力だと思うんです。自分が感じたことをダイレクトに世の中に発信することって、少年時代は社会から褒められますがオトナになるとそうでもなくて、バカにされることもある……。それでもずっと、本当にずっと想いを正直に発信し続けた結果、きっと柳内さんはこの企画でいうところの「アウトサイダー」になったんですね。きっと。

柳内 いろんなヒトに出会って、いろんなことを想って、いろんな作品でそれを伝えてきた結果、段々とメッセージが複雑化していっているのもその要因かもしれないけどね(笑) でも僕自身、常に進化していたいと切望している節もあって、それでも良いと思うんです。だって、それが僕ですから。




これからつくりたいこと

後藤 いろいろ聞いてきましたが、柳内さん、今後やりたいことってあります?

柳内 漫画は描き続けていると思います。好きで始めたことだし、楽しんでなかったら今もやってないですしね。あとは、今後生きていく中で、変わる部分と変わらない部分があると思うんです。世の中的に、変わらない部分の方が美徳とされる傾向がありますが、自分は根っこをしっかり持った上で、しっかりと変われる勇気を持っていたい。そして、その歳その歳で思ったことを漫画に描いていたいですね。

後藤 確かに、変わらないことと、変われないことって全然違いますしね。選択肢も多いし、なんでもかんでも「学校」で教えてくれる今だからこそ、柳内さんが言っている根っこの部分の重要性を時代が求めているという側面は、洋服の世界でも感じますね。

柳内 コトにとらわれず、楽しくなることが上手なヒトでありたい。目標です。

  


Profile
柳内大樹(やなうちだいじゅ)



1975年生まれ。1995年に『ヤングマガジンエグザクタ』(講談社)にて「別天地」でデビュー。2003年には、『ヤングキング』(少年画報社)にて「ギャングキング」の連載を開始し、累計1000万部を超える人気作に。現在『週刊ヤングマガジン』(講談社)で「セブン☆スター」を連載中。

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文/田形遼 写真/澤田聖司