JELADO's  Manufacturing

Episode.6 「ロマンと科学で紡ぐ”XX”の遺伝子 Vol.3」

~ヴィンテージにかけるロマン。さらなる深淵な世界に~

デッドストック状態の501XXをバラし、最新の科学と優秀なデニム職人の力を経て完成した301XX。2020年9月に301XXがリリースされてから1年以上の時を経て、本プロジェクトの新たな企画が立ち上がることとなった。前回同様に企画の水先案内人は国内のデニム産業におけるキーマンとも言える室井さん(以下、室井)。今回は新企画が立ち上がった背景と、その趣旨を室井さんとJELADO後藤(以下、後藤)との対談形式で紹介する。



「301XXはすごく良かった。でも、だからこそ違う視点で新しいチャレンジをしたくなったんです」―後藤


後藤 新しいプロジェクトの話をする前に、まず301XXの振り返りからしようと思うのですが、室井さんからみて製品として完成した301XXの仕上がりはどうでした? 

室井 JELADOとしてのこたえがしっかり示せていましたし、とても良かったんじゃないですかね? 製作する過程でも、企画、綿質、ムラの形状、仕上げの質感など、それぞれに対して後藤さんの要望が明確だったから、コミュニケーションのキャッチボールも円滑でしたし。逆にJELADOから見てお客さんのリアクションはどうだったんですか?

後藤 おかげさまで発売前から問合せがきていたし、発売から1年以上経った今でも新しく手に取ってくれるお客さんが現れてくれるんです。何よりも嬉しかったのが、いままでJELADOと接点のなかった方々にも301XXに興味を持ってもらえたことですかね。
301XXをリリースする前もアメリカンカジュアルブランドとしてさまざまなデニムアイテムをリリースしていたのですが、新たなお客さんがこの企画を機にたくさんいらしてくれたので、あまりデニムのイメージがマーケットに定着していなかったのかな、と不安になったぐらいです(笑)

室井 いいですねぇ。あとは、301XXをつくっていた時から話していましたが、こういう企画は1回で終わりにするのではなく、2回、3回と継続して、さらに良いモノを目指せると良いですよね。

後藤 まさに! 301XXはとても良かった。でも、あそこまで時間と労力とコストをかけたからこそ見えた、さらにやってみたいところが見えたので今回はそれらを実現しようかと。


「今回は40年代につくられた、いわゆる『47モデル前期』をつくりたいなと」―後藤


後藤 前回は’50年代の革パッチ、片面タブの「47モデル後期」をベースにしましたが、今回は’40年代につくられた「47モデル前期」をベースにして、新しいモデルを作ろうかなと思っているんです。要は、前回つくった生地は50年代につくられたプロダクトを再現する際に使い、今回つくる生地は40年代につくたれたプロダクトを再現する際に使用する、といったような使い分けをしてみたく。ちなみに、手元にある47モデル前期の個体を見ると横糸の色や、ネップ感、ムラがずいぶん粗く見えるのですが、どうしてこんなにも差が出るんですかね?

室井 単純に年代の差というだけでなく、個体差による違いもあるような気がします。というのも、当時は紡績技術が現代と比較してそんなに高くないわけです。彼らは織機にかけた際に糸が切れにくく、織りやすいストレートな糸をつくりたかったんでしょうけど、現在のような紡績技術がないのでどうしても意図しないランダムなムラが出てしまう。使用する綿だって品種改良された今のモノと違って性質だけでなく色味にもバラつきがあったわけですし。ロープ染色だって、季節によってきっと仕上がりが変わっていたはずなので。毎年、もっというと毎季節、毎ロットちょっとずつ仕上がりが違っていた可能性が高いと思うんですよね。

後藤 なるほど! この違いは単純に今回のベースとする501XXの年代が旧いから、というだけではなさそうですね。

室井 そうそう。たまに「え?これもXX?」というような個体ってあるじゃないですか? それぐらいの個体差があるのが501XXの魅力だと思うんです。つまり、それらを再現するにしても、その時手に取ったXXすべてに個体差があって、それぞれに味や特徴があり、ひとつとして同じものがないからこそ、面白さがあるのではないでしょうか。

後藤 何を再現するのかではなく、手元にある501XXに対してどのぐらい本気でどう再現するのかが大事ということですね。301XXは良い意味でキレイに仕上がったというか、あれはあれでJELADOとしてのひとつの正解を科学の力と日本の職人の力をかりて創れたと思うんです。ですので、今回はベースとするこの個体の良さを生かして荒々しさが際立つ生地をつくってみたいですね。


「紡績、染色、パターン。この3つで301XXとの差別化をはかり、JELADOのもうひとつの正解をつくりたいですね」―室井


後藤 さて、「荒々しさ再現する」となった場合、やはりポイントは紡績をする際のムラをさらに強くするというところだと思うのですが、もうひとつ大事なポイントは色ですかね。301XXでは色落ちの良さとスピードを意識した節はありましたが、今回は少し違ったアプローチをしたいというか。ヴィンテージ特有のあの黒々としたブルーをもっとわかりやすく出したいんですよね。

室井 たしかに糸に加工をかけてから染めた方が表面の色落ちはしやすくなりますが、新品状態の時に今回後藤さんが目指す色味にはなりにくいかもしれないですね。今回はもっとヴィンテージに突っ込んでいくという意味で、糸に二次加工などの細工をせずにそのままピュアインディゴに染めてみてはどうでしょうか? 今回の染色はインディゴの深み、中白感と色落ちの速さをどう表現するかがポイントです。

後藤 いいですねぇ。前回はベースとなった個体そのものの色味を再現することにコミットしましたが、今回はあえてやり方を変えてよりワイルドな色を再現できたら嬉しいです。

室井 感覚としてはムラが激しく、ネップもあり凹凸が激しいモデルになりそうですね。新企画の生地に関しては301XXとまた一味違う質感になると思います。

後藤 ちなみに、301XXをつくった際はかなりサイズの大きなヴィンテージの個体から採寸したパターンにグレーディング(型紙を必要なサイズに応じて調整すること)をかけて、つくったので、結果として股上が深く今っぽいシルエットになったのですが、今回は32インチの個体からパターンをとれるので、製品として仕上がった際には股上は浅く、すっきりとしたシルエットになるはずです。

室井 世の中には今回ベースとするモデルと同年代のヴィンテージを模したジーンズがいっぱいありますが、今回も「JELADOとしての新たな正解」をつくれそうですね。


「リリースは22年9月予定。今回も水先案内人としてよろしくお願いします」―後藤


後藤 よりキレイに仕上がった301XXと、より荒々しく仕上げる予定の今回の企画。それが仕上がった後もきっとまた新しい発見があって、数年後もその先もきっと501XXを追いかけているんでしょうね。

室井 完璧だと思う仕事をしていても、追求を繰り返していくうちにもっとチャレンジしたい壁が見えてくるというのはモノづくりの醍醐味ですね。大前提、あの時代につくられていたモノと完璧に同じものはつくれないわけですし。というのも、70年~80年前のアメリカで使っていた綿、紡績機、染色機、織機とまったく同じ条件のモノは現代にないし、もっというと、つくっているヒトや生産工程も違いますからね。
だからジーンズはいつまでも夢を追い続けられるのだと思います。

後藤 そうですね。どれだけ科学的なアプローチをはかって事実を積み上げたとしても、結局最後は知識や経験値がある者しかわからない「想像」で微調整をはからざるを得ないというところがロマンですよね。
製品のリリースは22年9月を目指しているので今回もよろしくお願いします。